東京地方裁判所 平成10年(ワ)17030号 判決 2000年3月31日
原告
阿久津廣子
被告
三ツ橋洋子
ほか一名
主文
一 被告らは、原告に対し、各自金一二四八万八五九一円並びに金四二四八万八五九一円に対する平成四年四月二一日から平成七年九月二六日まで及び金一二四八万八五九一円に対する平成七年九月二七日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告に対し、各自一億二一〇七万四四〇七円並びに金一億五一〇七万四四〇七円に対する平成四年四月二一日から平成七年九月二七日まで及び金一億二一〇七万四四〇七円に対する平成七年九月二八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、以下に述べる交通事故につき、原告が、被告三ツ橋洋子に対しては民法七〇九条に基づき、被告三ツ橋正に対しては自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」という。)三条に基づき、それぞれ損害賠償を求めた事案である。
一 前提となる事実
1 交通事故(以下、「本件事故」という。)の発生
(一) 日時 平成四年四月二一日午後三時一〇分ころ
(二) 場所 埼玉県深谷市大字折之口四〇五―二(以下、「本件現場」という。)
(三) 加害者 普通乗用自動車(熊谷五七み三八六七、以下、「加害車両」という。)を運転していた被告三ツ橋洋子(以下、「被告洋子」という。)
(四) 被害者 自動二輪車(熊谷め四六八一、以下、「被害車両」という。)に乗車していた訴外亡阿久津信一(以下、「亡信一」という。)
(五) 態様 本件現場は、県道深谷嵐山線と市道が交差する信号機による交通整理が行われていない交差点であり、市道側に一時停止の標識がある。
被告洋子は、加害車両を運転して市道を熊谷市方面から岡部町方面に進行し、本件現場において、県道を川本町方面から国道一七号線方面に向けて進行してきた亡信一運転の被害車両と衝突した。衝突の部位は、加害車両の左側後部ドアに、被害車両の前部が衝突したものである。
2 責任
被告洋子は、一時停止標識のある交差点を進入するに際し、左右の安全を確認してから進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と同交差点に進入した過失があるから、本件事故につき民法七〇九条に基づく責任がある。
被告三ツ橋正(以下、「被告正」という。)は、加害車両の保有者であり、加害車両を自己のために運行の用に供していたから、本件事故による人身損害につき自賠法三条に基づく責任がある。
3 亡信一の受傷状況とその後の経過
右事故により、亡信一は、脳挫傷、頭蓋骨骨折、右橈骨骨折等の重傷を負い、いわゆる植物状態となって、平成七年二月二三日症状固定となり、後遺障害一級三号との認定を受けた。
亡信一は、その後植物状態のまま推移したが、平成九年三月一三日急性肺炎により死亡した。
亡信一の治療経過は、以下のとおりである。
(一) 平成四年四月二一日から同年一〇月三日まで
深谷赤十字病院に入院(一六六日)
(二) 平成四年一〇月三日から平成五年一二月二九日まで
門倉病院に入院(四五三日、一日はダブっている。)
(三) 平成五年一二月二九日から平成七年二月二三日(症状固定日まで)まで
門倉好文記念病院に入院(四二二日、一日はダブっている。)
症状固定までの亡信一の入院日数は合計一〇三九日である。
(四) 平成七年二月二四日から平成九年三月一三日まで
入院七四八日
4 亡信一は前記のとおり死亡し、その相続人は実母である原告ただ一人である。
5 原告の主張する損害額
<1> 治療費 金 一三八万四七八四円
右治療費は、前記3の(四)の死亡までの最後の入院時のものである。それ以前の治療費は、労災保険及び加害者側から支払われており、請求していない。
<2> 両短下肢装具代 金 七万八三八〇円
医師の指示により、治療上の必要のため両短下肢装具を購入した費用。
<3> 入院雑費 金 一三五万〇七〇〇円
事故当日の平成四年四月二一日から症状固定の平成七年二月二三日までの入院期間中の一〇三九日間、一日一三〇〇円として算出。
<4> 看護料 金 二二三九万〇九五二円
ア 職業家政婦分 金 一三一九万〇九五二円
平成四年六月一七日から平成六年一〇月三一日まで職業家政婦に介護を依頼した費用。
イ 近親者分 金 九二〇万円
平成四年四月二一日から同年六月一六日までの五七日間
平成六年一一月一日から平成九年三月一三日までの八六三日間
亡信一は、事故発生以降瀕死の状態が続き、結局植物状態のまま死亡したから、その間一〇〇パーセントの看護・介護を要し、実母である原告が毎日看護に当たった。一日の看護料を一万円として合計九二〇万円となる。
<5> 医師謝礼 金 五〇万円
深谷日赤、門倉、門倉好文記念病院の各医師に支払った謝礼の一部である。
<6> 禁治産宣告手続費用 金 二〇万一五〇〇円
亡信一が植物状態であったため、本件損害賠償手続き(被告ら側との折衝、自賠責保険請求等)の必要上禁治産宣告の申立てをしたが、これに要した費用である。
<7> 休業損害 金 六六九万八八四六円
亡信一は、事故当時深谷所在の伊勢宗商事株式会社で稼働し、平成四年四月入社で年収二二〇万円余りであり、昇級も五パーセントが見込まれていた。
基礎収入は、平成四年の賃金センサス男子学歴計の一八歳から一九歳の年収である二三五万三三〇〇円とし、事故日から症状固定日までの一〇三九日分として右金額を請求する。
<8> 後遺障害逸失利益 金 九三九二万五四二八円
亡信一は、前記伊勢宗商事に勤務し、将来的に男子労働者として賃金センサス程度の収入は見込まれた。
亡信一は、平成七年二月二三日後遺障害一級の認定を受けていたので、労働能力喪失率は一〇〇パーセントである。
平成七年の賃金センサス男子高校卒の全年齢平均である年収五二五万三一〇〇円を基礎収入とし、二一歳から六七歳までの四六年間分の逸失利益をライプニッツ式で中間利息を控除して現価を求めると、前記金額になる。
<9> 亡信一の慰謝料 金 三〇〇〇万円
亡信一は、本件事故により重傷を負って前記のとおり治療経過を辿り、後遺障害一級の認定を受け、五年近く生命を維持したが、不幸にも死亡したもので、本人の精神的損害は甚大である。
右の慰謝料として三〇〇〇万円を下ることはない。
<10> 原告の固有慰謝料 金 二〇〇万円
息子である亡信一が瀕死の重傷を負い、五年近く経過して死亡したことにより、母として原告の精神的苦痛は耐え難いものがあった。原告固有の慰謝料として金二〇〇万円が相当である。
<11> 損害のてん補 金 四七四五万六一八三円
<12> 弁護士費用 金 一〇〇〇万円
<13> 請求額 金 一億二一〇七万四四〇七円
二 争点
1 過失相殺
(一) 被告らは、本件事故につき、亡信一にも次のような過失が存在すると主張し、少なくとも五割の過失相殺をすべきであるとしている。
被告洋子は、本件現場において一時停止標識に従い一時停止した後に交差点に進入したものである。
一方、亡信一は、本件現場に差しかかった際に、被害車両を制限速度を大幅に上回る速度で走行させて交差点に進入し、加害車両が交差点に先入しているにもかかわらず、亡信一はブレーキを踏むまで加害車両を発見しておらず(前方不注視による加害車両の発見の遅れ)、しかも、眼鏡等の着用が免許条件になっているにもかかわらず眼鏡等をせず、ヘルメットも正規の方法で着用していなかった。亡信一の傷害は、脳挫傷・頭蓋複雑骨折が主なものであるから、ヘルメットを着用していたならば、障害の程度をかなり軽くできたはずである。
(二) これに対し、原告は次のように反論している。
被告洋子が一時停止した事実は否認する。
また、亡信一が制限速度を大幅に上回る速度で走行させたとする点は、根拠がなく、亡信一がブレーキを踏むまで加害車両に気付いていなかったという点も加害車両、被害車両の速度が不明であるから亡信一に殊更な前方不注視があったとすることはできない。
亡信一が眼鏡等を着用していなかったと主張するが、実況見分調書上眼鏡等の所在が出ていないことをもって眼鏡等の不着用を認定することはできないし、ヘルメットを正規の方法で着用していなかったとなぜ言えるのか疑問である。
本件については過失相殺をするのは妥当ではない。
仮に、被告洋子が一時停止したとしても、それは、交差道路を車両が走行していたためであり、安全確認のために一時停止したわけではない。むしろ、被告洋子は、被害車両が本件現場に接近していることを承知していながら、被害車両の動静に注視せずに、他車両が本件交差点を通過したことに気を許して、漫然と本件交差点に進入したことによるもので、本件事故は被告洋子の全面的な過失によるものである。
2 原告の主張する後遺障害逸失利益につき、生活費控除をすべきか。
(一) 被告らは、後遺障害逸失利益について、次のとおり生活費控除をすべきであると主張している。
(1) 症状固定(平成七年二月二三日)後から死亡した平成九年三月一三日まで
亡信一は、昏睡状態のまま入院し、その後もいわゆる植物状態で推移したから、入院中は治療関係費(経管栄養費、オムツ代、エアーマット代、冷蔵ロッカー使用料、管理費、快適療養セットなどを含む。)の支出以外には、生活費(衣食住)の支出は必要なかった。
(2) 死亡後
亡信一は、平成九年三月一三日本件事故により死亡したため、それ以後生活費の必要性はなくなった。
亡信一は、本件事故により脳挫傷・頭蓋骨骨折等の重傷を負い、平成四年四月二三日に両側前頭大外減圧術を、同年九月一〇日に頭蓋形成術を行ったが、症状固定後も寝たきりのいわゆる植物状態(四肢体幹機能全廃で自動不能、咀嚼嚥下不可能、オシメを使用し、開眼していても追視全くなし、発声なし、体温調節不十分で微熱が続く、自己喀痰の排泄も困難)であった。
亡信一は、このような状態で全身及び肺機能が高度に衰弱し免疫不全となって、平成九年三月八日に急性肺炎にり患し、同月一三日死亡したのであり、交通事故によって植物状態にならなければ肺炎に感染する危険はなかったのであるから、亡信一の死亡と本件事故との間には相当因果関係がある。
したがって、亡信一の死亡後の逸失利益を算定するにあたっては、生活費控除をすべきである。
(二) これに対して、原告は、本件事故と亡信一の死亡との間の条件関係は認めるものの、相当因果関係があるとは言えないとしている。
すなわち、相当因果関係があると言えるためには、植物状態になった亡信一が急性肺炎になって死亡するという事実経過が、通常当然に発生するもの、あるいは、医学的に見て極めて一般的に発生するという場合でなければならないし、本件事故の発生から死亡までの時間的な要素も十分考慮されるべきである。
亡信一は、結局植物状態を脱することはできなかったが、本件事故から死亡まで約五年間生存していたのであり、また、植物状態になった者が、医療面及び生活環境面でのケアー次第で長期間にわたり生命を維持し続けるケースが沢山あることも公知の事実である。
3 損害のてん補について
(一) 被告らは、損害のてん補として、以下のとおり主張している。
(1) 加害車両付保の自治労共済から 合計金 二三三八万五三一七円
<1> 治療費 金 四九八万六五二四円
<2> 職業家政婦代 金 一三一九万〇九五二円
<3> 休業損害 金 四〇六万五二三一円
<4> 休業損害 金 九四万二六一〇円
<5> 内金 金 二〇万円
(2) 自賠責保険から 金 三〇〇〇万円
(3) 労災保険から 金 三〇三五万六三六七円
<1> 療養補償給付金 金 一九八七万一〇八七円
<2> 遺族補償一時金 金 六〇七万六〇〇〇円
<3> 遺族特別支給金 金 三〇〇万円
<4> 遺族特別一時金 金 九三万二〇〇〇円
<5> 葬祭費 金 四七万七二八〇円
(4) 自動車事故対策センターからの介護料 金 五五五万六〇〇〇円
(5) 傷害年金 金 六九八万二五七五円
(二) これに対して、原告は、損害のてん補として扱うことにつき、次のとおりの反対の意見を表明しているものがある。
(3)の<1>の療養給付について
原告は、右給付につき、介護料等を含めた積極損害の全項目について、一律にてん補として認めるのは相当ではない。
被害者に過失相殺がある事案においては、労災保険からの給付は、健康保険と同様公的な給付を控除した後に過失相殺を行うべきである。本件の場合に、過失相殺後に控除すると、労災保険の適用を受けたことによる利益は加害者である被告ら側が享受することになって不合理である。
(3)の<3>及び<4>について
遺族特別支給金及び遺族特別一時金は、いずれも労働福祉事業に基づく支給分であるから、損害賠償のてん補分に該当しない。
(3)の<5>の葬祭費について
本件損害賠償のてん補分に該当しない。
(4)の自動車事故対策センターからの介護料
これについては、原告及び被告らの双方から主張がなされている。
まず、被告らは、右の介護料五五五万六〇〇〇円の給付を損害のてん補と認めるべきであるとしてかなり詳細に論じている。
その要旨は、自動車事故対策センターは、自動車事故の防止と自賠法と相まって事故被害者の保護の増進を目的とするところ、右センターの支給する介護料は、自賠責保険再保険特別会計の保険勘定において生じる運用益を原資としている(自賠責保険の全契約者の負担において支払われている。)。また、亡信一の看護料とセンターの介護料との間には同質性があるから、損害のてん補として扱うべきであるとしている。
原告は、大要次のとおり反論している。
右介護料は、自賠責保険とは異なり、厳しい支給要件に該当する場合に限り支給を受けられ、制度趣旨としては、常時介護を要する重度後遺障害者をかかえる家族の精神的、肉体的、経済的負担を軽減するためのものである。また、自賠責保険金額から右介護料を控除することもなく、加害者に対する求償も予定されていない。したがって、これを損害のてん補として扱うことはできない。
4 各損害額
各損害額については、判断に必要な限度で主張をも摘示することとする。
第三当裁判所の判断
一 争点一(過失相殺)について
1 乙第一ないし第一三号証(いずれも本件事故の刑事捜査記録中の証拠)及び乙第一五号証によれば、以下の事実を認めることができる。
本件事故現場は、別紙図面のとおり、信号機による交通整理の行われていない交差点で、亡信一の進行していた道路は幅員約一三メートル、被告洋子の進行していた道路は幅員約七メートル(交差点に進入する側の幅員)であり、交差の仕方は、被告洋子の進行方向にそって左側がかなり鋭角的に交差点に進入することになるが、実況見分調書(乙第二号証)の道路条件の記載や添付写真によれば、被告洋子及び亡信一の双方から見て、お互いに見通しは良い。
被告洋子は、右交差点で一時停止し、交差道路の両方向からの走行車両(各二台)の通過を待ったが、この際交差道路左方約七五・六メートルの地点(この距離については、被告洋子も必ずしも正確ではないことを認めている。)に被害車両を認めていた。被告洋子は、交差道路の走行車両が交差点を通過した後加害車両を発進して交差点に進入し、加害車両の前部が交差点出口に差し掛かった時点ころに、加害車両の左側後部ドアの前から中央にかけての部位に、被害車両前部が衝突した。
被害車両の衝突直前の路面には約五メートルにわたってブレーキ痕が残され、加害車両は約九・五メートルにわたってタイヤ擦れ痕を残した後進行方向左側の電信柱に衝突して停止し、被害車両は衝突地点から約四メートル、亡信一は衝突地点から約一四メートル離れた地点に転倒していた。
2 右に認定した事実から、過失相殺に関連する事実を列記する。
(一) 亡信一には、前方不注視による加害車両の発見の遅れが認められる。
被害車両のブレーキ痕が衝突直前の約五メートルしかなく、見通しの良い交差点で、加害車両が先に交差点に進入している(これは、加害車両から見て交差点の出口に近い地点で、加害車両の左側面のどちらかというと後部に被害車両の前部が衝突していることから認定できる。)のに衝突しているのであるから、亡信一は加害車両の発見が遅れたものと推認される。
(二) 被害車両の速度が制限速度を超過していたと考えられる。
被害車両及び亡信一は、衝突後前記のとおり場所的に飛ばされており、特に亡信一自身が加害車両を飛び越えて約一四メートルも離れた地点に転倒したことからすれば、常識的に考えても制限速度(毎時五〇キロメートル)を超えているものと思料されるが、具体的にどの程度の速度であったかを認定する証拠はない。
この点は、過失相殺の一事由になるものと評価できるが、著しい速度違反があったとまで評価することは、事故後本件事故について自らの見解を述べることができなかった亡信一側に、不当に不利な結果を強いることになる危険性もあるので、慎重を期する必要がある。
(三) 眼鏡の不着用、ヘルメットの適正なる着用がなされなかったとの点は、これを認めるに足る証拠はない。
たしかに、眼鏡が事故現場から発見されなかったことは、原告もことさら争っていないことからこれを認めることができようが、しかし、前記のとおり亡信一は衝突後一四メートルも飛ばされているのであるから、眼鏡の形状や重量を考えた場合、衝突の衝撃で眼鏡が外れてどこかに飛んでいったために、実況見分時にこれを発見できなかった可能性は否定できず、ヘルメットの件も、衝突時の大きな衝撃のために外れたとも考えられる。
(四) 被告洋子は、法的な規制に従い、本件交差点進入前に一時停止したものと認められる。
原告はこの点を争っているが、被告洋子は、本件事故直後の実況見分の時から一貫して一時停止したと説明し、その内容もある程度具体的であり、被告洋子の供述は信用できる。
(五) 被告洋子は、被害車両を発見しながら動静注視を怠って本件事故を惹起したものと認められる。
この点は、被告洋子の前方注視義務違反として被告らもことさら争っている訳ではないと思料されるが、本件交差点が、被告洋子の側から見ても見通しのよい交差点であり、しかも、被害車両を交差点進入前に認めていたというのであるから、その後も被害車両に気を配って衝突の起きないように注意すべきであった。
被告洋子の供述によれば、交差道路の通過車両をやり過ごした後発進する際にも左方の被害車両を確認した趣旨の説明をしているが、もしそうであるとすれば、被害車両の速度等をも考慮して、交差点を渡り切れるか、切れないかを適確に判断して行動すべきであった。
交差点において、一時停止義務のある側の車両とこれがない側の車両の衝突事故の場合、交差点内の安全確認につき一時停止義務のある側の車両により慎重な態度が求められるのであり、被告洋子の説明を前提にしても、交差道路の通過車両に気をとられて、被害車両との衝突の危険性に対する認識が薄弱になったと評価されてもやむを得ないであろう。
3 本件事故車両が普通乗用車とオートバイであることのほか、以上に検討した諸事情をも総合考慮し、本件事故について、亡信一に三五パーセントの過失相殺を認めるのが相当である。
二 争点二(生活費控除)について
1 症状固定時期と症状固定後死亡までの間の後遺障害逸失利益について
(一) 被告らは、亡信一の症状固定時期は平成四年一〇月三日であると主張している。
これは、亡信一の症状が固定したからこそ、右同日に深谷赤十字病院から門倉病院に転院したとの理由による。
そこで、深谷赤十字病院及び門倉病院での亡信一の症状及び治療状況について検討する。
亡信一は、本件事故(平成四年四月二一日午後三時一〇分ころ)後救急車で深谷赤十字病院に搬送されたが、意識は昏睡状態であり、緊急手術を実施するも意識状態はレベルⅢで、刺激しても覚醒せず、その後症状が安定しても意識は戻らず(四肢も麻痺で動かず)、意識レベルⅡの状態(刺激すると覚醒する。具体的には対光反射はないが瞬目反射はある。痛み刺激に反応あり、顔をしかめたり、逃避反応がみられる。)であり、同年七月一五日頭蓋骨形成術中に大量の出血をしたため、頭蓋骨形成術は施行せずに急性硬膜外血腫除去術を施行。同年九月一〇日になって頭蓋骨形成術を施行したが、意識レベルは従前と同様意識を回復せず、植物状態で門倉病院へ転院となっている(乙第二〇号証の一の特に四ないし九丁、一九丁、また、乙第二〇号証の三の診断書には、初診時は昏睡状態でその後遷延性意識障害へ移行した旨記載されている。)。
また、転院した門倉病院においても、深谷赤十字病院から門倉病院に転院した平成四年一〇月三日を症状固定日として後遺障害診断書を作成したり(乙第二一号証の九丁)、植物状態で門倉病院に転院した旨の記載がある(同一〇丁)など、亡信一が門倉病院に転院した際には既に亡信一の症状は意識のない状態で安定していたため、植物状態と評価されていたものと認められ、さらに、門倉病院に転院してから死亡するまでそのような状態が継続していた(乙第二二号証)。
以上認定の事実からすれば、亡信一は、平成四年一〇月三日に遷延性意識障害、四肢麻痺、自発運動の欠如等を残して症状は固定し、その結果後遺障害等級一級に該当する後遺障害を負ったものと考えるのが合理的である。確かに、甲第二号証では、深谷赤十字病院で亡信一が入院していたころ亡信一の治療を担当した医師が、症状固定日を平成七年二月二三日として後遺障害診断書を作成しているが、これは、右後遺障害の診断日と同日であることから、既に退院した患者側から後遺障害の診断を依頼された医師が、診断の時点で症状固定状態にあるとして右期日を記入したものとの評価が可能である。
(二) 生活費控除をすべきかについて検討する。
後遺障害逸失利益を算定するにあたっては、死亡の場合とは異なり生活費控除を行わないのが通常であり、仮に、後遺障害を負ったことによって、健常人に比して一見生活費を要しないように見える場合でも、後遺障害を負った被害者が人間として生活していくためには、健常人とは違った費用を要することも予想されることから、生活費控除を行うことには慎重な態度が望まれるところであろう。
しかしながら、本件の亡信一のような植物状態にある被害者の場合は事情を異にすると考えられる。
なぜなら、そのような被害者の場合、意識もなく、自動運動もできない状態が死亡時まで継続する蓋然性が極めて高く、病院に入院したままで付添人の介護を受け、栄養も経管により摂取する(したがってこれも治療費に含まれる。)など、全生活にわたって介護や医療的措置を受け、逆に、これらの介護や医療的措置以外に必要とされる生活費はあまり想定できない状況にある。
本件の亡信一の場合、生活費と言える介護費用や治療関係費用は、既に費消された積極損害として評価されて賠償の対象となっているのであるから、これらの費用を要することをもって生活費控除を行うとすれば、一つの損害を二重に評価する結果となるおそれがあり相当ではない。
したがって、被告らが、本件において、亡信一の生存中であっても生活費控除を行うべきであると主張している点は理由がある。
ただし、死亡した場合と全く同様に考えてよいかは問題であり、やはり生存している以上、医療関係費用以外に生活費を要することはあり得、これを入院雑費や介護費用としての損害で全部把握しきれないこともあるから、独身の男子である亡信一の場合でも、生活費控除割合は三割とするのが相当である。
2 死亡後の逸失利益について
(一) 交通事故によって被害者が後遺障害を負った場合、既に事故の時点で逸失利益は一定の内容として発生しているのであるから、その後被害者が死亡したからといって、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきではなく、死亡後の後遺障害逸失利益も認めることができる。
しかしながら、後遺障害が発生した原因と死亡の原因が同一の交通事故に求められる、すなわち事故と死亡との間の相当因果関係が認められる場合には、損益相殺の考え方からすると、逸失利益を算定する上で生活費控除をすることができるものと解される。なお、一度症状固定の判断がなされながら、その後に後遺障害を発生させた事実と同じ事実により死亡するということは、症状固定という概念からみてあり得ないのではないかとの疑問もあろうが、症状固定という判断は、必ずしも純客観的、自然的な判断ではなく、今後症状が改善も憎悪もしないであろうという展望的な判断であり、また、これ以上の治療が考えにくいといった規範的な判断をも含むものであるから、症状固定後において、後遺障害を発生させた事実により死亡に至る(相当因果関係が認められる)という事態のあることは否定できないであろう。
本件の場合、亡信一はいわゆる植物状態にあったとして、生存中の後遺障害逸失利益を算定するにあたり、一定の生活費控除をする必要があることは前述のとおりであるが、それは、生活に必要な種々の措置が治療又は介護の関係の積極損害として賠償の対象になるために、生活費控除をする必要が生じるものであり、亡信一死亡後の治療費及び介護料は損害として発生することはないから、この点からの生活費控除は問題とならない。
したがって、亡信一の死亡が本件事故と相当因果関係があれば生活費控除をするのが相当とされるのである。
(二) そこで、亡信一の死亡と本件事故と相当因果関係があるかを検討する。
原告も本件事故と死亡との間の条件関係は認めているように、亡信一が死亡した原因は急性肺炎であるところ(甲第三号証)、亡信一は前述のとおり植物状態になっていたもので肺炎等に感染しやすく、防御力も低下していたものと認められる(乙第二八ないし第三〇号証)。死亡診断をした門倉医師も、労働基準監督署長宛の意見書において、四肢体幹機能全廃で自動不能であり、自己喀痰の排泄も困難で、看護婦が定期的に口腔内気管内吸引を施行していた事実を挙げ、交通事故による外傷(脳挫傷等)の為に植物状態にならなければ肺炎の感染の危険はなかったと述べており(乙第二二号証一六丁)、本件事故が亡信一の死亡に寄与していることは疑いない。
しかしながら、原告の主張するように、亡信一は本件事故から約五年を経過して死亡しており、また、実質的に植物状態に陥ったと判断される、門倉病院への転院時(平成四年一〇月三日)からみても四年半近く生存していること、交通事故によって植物状態に陥った被害者が、感染症により程なく死亡するということが通常であるとは認めがたいこと等を考慮すると、本件の場合に、本件事故と肺炎による死亡との間の相当因果関係まで認定することは困難な状況である。
以上の諸事情を考虜すれば、亡信一の死亡と本件事故の間で割合的な寄与を認めるのが相当であり、このように解することは、損害賠償制度の理念の一つである衡平の観点及び事案毎による弾力的な解決に資するものとして是認されよう。
本件の場合、事故から死亡までの期間、亡信一の治療経過、直接の死因等を総合的に考慮して、本件事故の亡信一の死亡に対する寄与の割合は四割とするのが相当であり、亡信一が独身の男性であることを考慮すれば、逸失利益の算定に関して二〇パーセントの生活費控除をすることとなる。
三 争点三(損害のてん補)について
1 労災保険の療養給付について
労災保険の療養給付が、損害のてん補としての性質を有することは、当事者間に争いがない。
問題は、本件のように過失相殺がなされる事案において、てん補金額を損害額から控除するのは、過失相殺の処理を行う前か後かであり、また、控除される対象となる損害の費目は治療費のみに限定されるかである。
労災保険による給付は、労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」という。)に基づき、労働者の業務災害等に対して一定の給付をなすものであるが、使用者以外の第三者が加害者であり、かつ、加害者側に責任が認められる場合には、政府は、保険給付した限度で、給付を受けた者の加害者に対する損害賠償請求権を取得し、また、第三者が給付を受けるべき者に対して同一の事由について損害賠償を受けたときは、その限度で給付をしないことができる(労災保険法一二条の四)から、不法行為に基づく損害賠償と労災保険による保険給付とは、被害者の被害救済のための相互補完的な制度であると解される。したがって、労災保険が適用されたからと言って、被害者にことさら有利な取り扱いをする訳ではないから、過失相殺の適用のある事案では相殺後に控除するのが相当である。
次に、労災保険法一三条によれば、療養給付の範囲には、単に、診察、薬剤または治療材料の支給、処置、手術、その他の治療にとどまらず、居宅や病院等での療養に伴う看護一般や移送をも含まれているから、損害のてん補にあたっては、右の範囲でてん補性を認めるべきである。
したがって、本件においては、労災の療養給付は、介護料などにもてん補される。
2 遺族特別支給金及び遺族特別一時金について
これらの給付は、労働福祉事業の一環として行われ、被災労働者の福祉の増進を目的としていること、また、これらの給付には、前記の加害者に対する代位の規定(労災保険法一二条の四)がないことから、損害のてん補性はない。
3 自動車事故対策センターからの介護料
自動車事故対策センター(以下、「対策センター」という。)は、自動車事故対策センター法(以下、「センター法」という。)によれば、自動車の運行の安全の確保に関する事項を処理する者に対する指導、自動車事故による被害者に対する資金の貸付け等を行うことにより、自動車事故の発生の防止に資するとともに、自動車損害賠償保障法による損害賠償の保障制度と相まって被害者の保護を増進することを目的としている(センター法一条)。
対策センターの行う業務の一つに、交通事故被害者の後遺障害のための治療及び療養を行うための施設を設置し、運営すること(センター法三一条一項五号)があり、本件で問題となる介護料の支給は、センター法三一条一項九号の第一条の目的を達成するための必要な業務に含まれ、仮にセンターが被害者に対して介護料等を支給したとしても、加害者に対する代位規定は存在しない。
対策センターの業務目的は、前記の条文からも明らかなように、交通事故の防止と被害者の保護の増進であり、自賠法の保障制度と相まってとされているが、自賠法の規定する損害賠償制度そのものではないことはもちろん、むしろ、交通事故被害者で保護に欠ける者に対する支援という社会福祉的な施策の一環として捉えるべきであろう。
センター法の目的の中に被害者に対する資金の貸付けという損害賠償制度とは異質な業務を掲げていること(一条)、介護料の支給については、自動車事故で頭部又は脊髄に損傷を受け、その後の治療にもかかわらず寝たきりの状態の患者を抱える家族にとって、経済的、肉体的、精神的負担は大きいものがあり、その負担を軽減するために支給されるものであり(自動車関係法令質疑応答集一五〇七頁)、支給対象は、自力移動が不可能であるといった後遺障害が三か月以上継続し、常時介護を必要とする者とされており、自賠法の損害賠償制度とは違って、保護を必要とする者と相当限定しているかわりに、保護が必要と認められれば支給を受けられる制度であることも、これを裏付けるものと解される。
以上のような、(センター法の掲げる目的、介護料の支給対象、代位規定の不存在等の諸点を考慮すると、被告らが主張するように、支給額の算定方法が日額四〇〇〇円(自宅で近親者の介護を受けている場合は二〇〇〇円)として日数分を支給するという、現実の介護費用を念頭においた方法であるとしても、センターからの介護料を民事の損害賠償制度の中で損害のてん補として扱うことは相当ではない。
四 争点四(損害額)について
前記のとおり、本件は過失相殺の適用のある事案であるから、全損害額を確定した上で、過失相殺、損害のてん補の処理をする必要があるから、損害項目全般について、必要な限度で当事者の主張を簡潔に示しつつ、当裁判所の判断を示すこととする。(別紙損害計算書参照)
なお、結論を明示するために、各損害ごとに裁判所の認定額を冒頭に記載する。
1 治療費 金 二六二三万一八四〇円
原告が治療費として金一三八万四七八四円を門倉好文記念病院に支払わなければならない(甲第五ないし第七号証)が、これにつき、被告らにおいては、症状固定後の治療費であり賠償の対象にならないと主張しているが、亡信一の症状は植物状態であり保存的な治療が生存のために必要であったものと認められるから、賠償の対象となる。
また、被告ら車両付保の自治労共済から金四九八万六五二四円(乙第一六号証の一ないし三、第一七号証、第一八号証)、労災保険から一九八六万〇五三二円(乙第一九号証の一)が各医療機関に治療費として支払われたことが認められる。
したがって、治療費全体としては金二六二三万一八四〇円となる。
2 装具代 金 七万八三八〇円(甲第八号証の一、二)
3 入院雑費 金 一三五万〇七〇〇円
亡信一は、原告が主張する一〇三九日以上入院していたのであるから、一日あたり金一三〇〇円として金一三五万〇七〇〇円の入院雑費を認めることができる。
被告らは、亡信一が植物状態にあったことから治療費以外の入院雑費は必要ないと主張するが、生存している以上多額ではないにしても雑費的な出費は避けがたいと考えられるから、入院雑費については一般の場合と異なる扱いをするのは相当ではない。
4 看護料 金 一八六一万四九五二円
職業的家政婦による看護料として一三一九万〇九五二円が支払われたことは、当事者間に争いがない。
亡信一の母である原告が、本件事故により重傷を負った亡信一の付添看護をする必要性は、植物状態になった後も認めることができる。
原告は、平成四年四月二一日から同年六月一六日まで介護したと主張するが、 被告らは、同年六月一日から職業的付添が開始したものと主張し、この点に関し原告の立証はないから、原告による介護は平成四年四月二一日から同年五月三一日までと、平成六年一一月一日から平成九年三月一三日までの合計九〇四日間である。
近親者の付添として看護料は一日あたり六〇〇〇円と考えるのが相当であるから、結局原告による看護料は金五四二万四〇〇〇円となる。
したがって、看護料全体としては、金一八六一万四九五二円となる。
5 医師に対する謝礼 金 五〇万円
亡信一の傷害が重傷であり、度重なる手術を経て約五年にわたり、複数の病院に入院していたことからすれば、世話になった医師に対する謝礼として、金五〇万円程度は社会的にみて相当であり、本件損害賠償の対象となる。
6 禁治産宣告手続費用 金 二〇万一五〇〇円
亡信一は植物状態となったため、亡信一の法的権利義務関係を整理し、解決するには、当時においては禁治産宣告を得る必要があった。たしかに、本件訴訟は亡信一死亡後に提訴されており、本件訴訟のみを考えれば禁治産宣告手続は不要であるが、本件事故による損害賠償問題を解決するためには(被告ら側との交渉や自賠責保険請求手続等)、必要であったものと認められ、原告主張の金額を認めることができる(甲第九号証)。
7 休業損害 金 一〇〇万〇五四七円
休業損害の算定に際し、亡信一の症状固定時期は、前述のとおり、平成四年一〇月三日と考えるから、休業損害の対象期間は一六六日である。
基礎収入としては、弁論の全趣旨により、年収二二〇万円と認める。
よって、休業損害は、次のとおり金一〇〇万〇五四七円となる。
(計算式)
二二〇万円÷三六五×一六六=一〇〇万〇五四七円
8 後遺障害逸失利益(生存中) 金 八九〇万八五二三円
亡信一の、平成四年一〇月三日から死亡した平成九年三月一三日までの間の四年五か月間の後遺障害逸失利益を算定する。
基礎収入は、逸失利益の算定期間が亡信一の一八歳から二三歳までの間であり、亡信一が本件事故当時高校を卒業して稼働していたこと(乙第八号証)を考慮すれば、平成四年の賃金センサスの男子高校卒の二〇歳から二四歳までの平均賃金である三二二万八一〇〇円とし、前述のとおり生活費控除割合を三〇パーセントとし、対象期間を四年半として、年五パーセントのライプニッツ係数を用いて中間利息を控除すると、八九〇万八五二三円となる。
(計算式)
三二二万八一〇〇円×(一-〇・三)×三・九四二四=八九〇万八五二三円
9 後遺障害逸失利益(死亡後)金 六一三五万〇六三四円
亡信一の基礎収入は、平成九年賃金センサスの高校卒男子全年齢である、五三九万〇六〇〇円とするのが相当である。
前述のとおり生活費控除割合を二〇パーセントとし、算定期間は死亡後から六七歳までとして、前項と同様に中間利息を控除する。
(計算式)
五三九万〇六〇〇円×(一-〇・二)×(一八・一六八七-三・九四二四)=六一三五万〇六三四円
10 慰謝料 金 三〇〇〇万円
亡信一が本件事故により傷害を負い、治療の甲斐無く植物状態(後遺障害一級)となって、さらに、その後本件事故が一つの原因となって本件事故から約五年後に死亡したことをも考慮すれば、亡信一自身の無念さはもちろんのこと、亡信一の介護等のための原告の労苦も甚だ大なるものがあったものと思料される。
右事実に加え、本件に顕れた一切の事情を考慮して、亡信一の慰謝料全体として金二八〇〇万円、原告固有の慰謝料として金二〇〇万円とするのが相当である。
11 小計 金 一億四八二四万七六三一円
12 過失相殺
前述のとおり、本件においては三五パーセントの過失相殺をするのが相当であるから、右相殺後の金額は九六三六万〇九六〇円となる。
13 損害のてん補 金 八五三七万二三六九円
(一) 労災 金 二五九四万七〇八七円
療養給付 金 一九八七万一〇八七円
遺族補償一時金 金 六〇七万六〇〇〇円
これらはてん補して認められ、特別支給金は、争点に対する判断において示したようにてん補の性質を有しておらず、葬祭費は、原告が右費目の損害を請求していないから、てん補として認めることはできない。
療養給付については、過失相殺がなされても、治療費以外の療養給付としての性質を有する介護料などの損害に充当されるから、結局全額てん補として扱われる。
(二) 自賠責保険 金 三〇〇〇万円
平成七年九月二七日に三〇〇〇万円の自賠責保険金が支払われたことは当事者間に争いはない。
(三) 自治労共済 金 二二四四万二七〇七円
治療費、職業家政婦代、休業損害、内金の支払いがなされたことは当事者間に争いがないか、証拠上認められる。しかし、金九四万二六一〇円の休業損害の支払いについては、これを認めるに足る証拠がない。
(四) 障害年金 金 六九八万二五七五円
六九八万二五七五円の支払いがあったことは、当事者間で争いがない。
14 てん補後の残額 金 一〇九八万八五九一円
15 弁護士費用 金 一五〇万円
原告が、本件訴訟の提起、追行を原告代理人らに委任したことは当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、認容額、審理経過等を総合勘案して、被告らに賠償を求められる弁護士費用としては一五〇万円とするのが相当である。
16 合計 金 一二四八万八五九一円
第四結論
以上の次第で、原告の請求は、金一二四八万八五九一円並びに金四二四八万八五九一円に対する平成四年四月二一日から平成七年九月二六日(同月二七日に支払われているから遅延損害を請求できるのはその前日までである。)まで及び金一二四八万八五九一円に対する平成七年九月二七日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるから、主文のとおり判決する。
(裁判官 村山浩昭)
10-17030 損害計算書
交通事故現場見取図